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~石倉ももこさんインタビュー後半~

Q.休学インターン後は、4年の休学を終えて就職活動が始まる時期ですよね?
そうですね。インターンを終えて、2月末に東京に戻りました。当時は3月から就職活動が開始するという世間の雰囲気もあり、それに合わせて東京に戻りました。ただ、まだ島根で働くって決めきれなかったからいったん東京に戻って就活してみようかな、くらいの気持ちで東京に戻りました。東京で働こうと決めたわけでもなかったんです。いわゆる都会の就活というものを体験してみたい!という好奇心でした。スーツを着て幕張メッセで開催される大きい合説に行く、みたいなことを一度経験してみたいと思って行ったりしていました。でも行ってみて、すごく異様な光景だなと思ってしまって。島根にいたときは、組織の人事の人と就活生の私とかではなく、一人の人と一人の人として関係性を築いった上で一緒に働かせてもらっていたという感覚があったから、企業の説明をされて、数多いる就活生の一人として見られて、この関係性ってなんなんだろう、この関係性じゃないと就職活動ってできないのかな、おかしくない?と思っていました。この人と働きたいと思った人に採用されたいし、この人と働きたいと思える人と一緒に働きたいと思っていました。
でも、一応その就職活動の流れに乗って、エントリーシートとか出したりしても明日。そんな就職活動を5月くらいまで続けて、島根で経験した教育や人材業界を志望して、いくつか受けていました。でも一番憧れていた会社に落ちた時に、「あ、東京で暮らす意味がなくなった」と思ったんです。そこで気持ちの整理がついた感覚がありました。それから、他の企業も辞退させてもらって、島根帰ろうと決めました。大学もあとゼミと卒論を書くだけだったから、教授のところに「島根帰りたいんですけど、月に一回東京にきてゼミに参加するので、他の授業は免除してもらえませんか」ってお願いに行ったら、「お!いいよ〜」と快く承諾してくださったので、4年生の5月には島根に帰って、島根で暮らそうと決めました。
ー石倉さんの話を聞いていると、全ての行動の前には「憧れ」というものがある気がしました。でもそれを全部やっちゃうのがすごいですね。
憧れというのが原動力はだと思います!!ロールモデルとの出会いとか、親の発言とか、誰かに勧められて自分が経験していないことに対しての憧れはあった。憧れから生まれた経験してみたい!ということを満足するまでやるから、一個一個やることに対しては全く後悔はないですね。あのときこうしておけばよかったと思うことは全く無いです(笑)
Q.これまでで、憧れのものにたくさん出会った大学生活から島根に帰ることを決めて島根に就職をすることを決めたというところまで話をしてきたのですが、今島根に帰って、働き初めてどうですか?
一緒に島根で活動してきた私たちの同世代は、やっぱりまだ新卒では都会で働く人の方が多いです。でも意思を持って島根で働くことを選んでいる人も年々増えてきている気がします。
私は、これがやりたいから島根で就職した、という感じではなくて。島根の人と出会ったり島根で起こっている取り組みに参加させてもらったりして、大学生活を通して島根に育ててもらったと思っていて。自分の人生を自分で選択できるようになっていったのも島根のおかげだと思っています。だから、自意識過剰ですけど、ここで私が島根を選ばなかったら、だれも島根を選ばないんじゃないかって思っていたので、そういう意図で島根を選んだという背景は大いにあります。島根に帰ろうというのをまず決めて、それから何をしようと考えていきました。
新卒で就職した一社目は、まだ島根で見ていない世界を見たいという考えが強かったので、でもその中でも島根の企業なのに日本を代表することをやっているとか、最先端の取り組みをしているところに行きたいと考えていました。あと、今までどちらかというと、中間支援組織とか行政の立場での仕事を見させてもらっていたから、島根県内の民間企業に入ってみたいという気持ちで1社目を選びました。1社目に入ったところが、石見銀山生活観光研究所というところでした。私は大学時代、この人に会いたい!という人に会いに現地に行くことで、自然とその土地の魅力や取り組みを知るみたいなことがたくさん起こっていたので、その土地で暮らしている人に会いに行って話を聞いたり、その土地で生活している人の暮らしを体験するみたいなことが、島根をおもしろいと思う入り口になるんじゃないかという思いがありました。そういうその暮らす人を通して、その土地を好きになってもらう、みたいなことが、島根っておもしろいと思える入り口になるんじゃないかなと思って、入社しました。
そこでの体験はすごく勉強になりました。ただ、お客様のメイン層は50〜60代のご婦人が多かったんです。それは最初からわかっていたことだったけど、私が価値を提供したいのは誰だっけ?と改めて自分に問い直す機会になりました。私はやっぱり大学生とか、これからのキャリアを考え決めていく時期の人たちに対して私ができることをしていきたいと強く思うようになって、転職を決めました。
Q.今のお仕事を教えてください。
今は、地域・教育魅力化プラットフォーム、株式会社MY TURN、株式会社ソフィアクロスリンクという会社でお仕事をさせてもらっています。地域・教育魅力化プラットフォームでは、大学生の頃からやっていたルーツしまね事業を中心に取り組ませてもらっています。自分が大学生活を通して、島根の人と出会ったり、いろんな取り組みを間近で見させてもらうことで、自分のキャリアと向き合うきっかけになったという恩恵があるので、これからの世代にもそういった経験ができる選択肢を提示できたらいいなと思っています。お節介かもしれませんが(笑)
株式会社マイターンでは、関東の大学で島根県の事例を通してローカルビジネスを考えるという講義の運営を、田中輝美さんと一緒にさせてもらっています。これも対象は大学生で、島根出身の大学生ではないけど、島根を通して自分の興味を深めたり、社会との接点を持つきっかけにしてもらえたらいいなと思っています。株式会社ソフィアクロスリンクは、島根県内の中小企業さんに対して研修をさせてもらうというお仕事をしています。普通社内研修って社員のみで実施すると思うんですが、この研修では社員と、高校生・大学生が一緒に研修を実施します。社員が高校生や大学生の考え方や発言でハッとさせられる、みたいな瞬間もあったり、高校生や大学生は、自分の意見に耳を傾けながらチームを先導してくれる社会人に憧れを抱いたり、そんな双方にとっての転機の場に立ち会えるのはすごく楽しいです。

Q.自分が大学生の時に受けてきたことを、社会人という立場で、高校生や大学生に向けて提供するところまでたどり着いたということですよね。そんな中で、ルーツしまねというコミュニティを大学時代につくって、印象に残っていることや、これから更にこう良くしたいという想いはありますか?
印象に残っていることはいっぱいありますね。でもやっぱり、休学インターンの最後の仕事だった、しまね未来共創フェスタはすごく思い入れがありました。県内の高校生、島根県にゆかりのある大学生、県庁の方や県内企業の経営者の方とかが集まって、年齢や肩書関係なく、どうしたら島根に人が帰ってくるのか、これからどんな島根になっていったら魅力的な島根になるのかみたいなことを、みんなでフラットに考えられる場があるということが島根ってすごいな、やっぱこれは島根だからできることでしょ!という、島根の明るい未来に確信が持てる場でした。そしてそう思ったのは自分だけでなく、自分たちの同世代の大学生や高校生も、島根っておもしろい!と思っているとあの場で聞いた声や温度で感じました。
ルーツしまねでは、そういう、同世代、後輩、憧れの先輩との繋がりが生まれ、同じ未来を見据えて本音で語り合う場をたくさんもらいました。そういう濃い時間を通して、いつでも本音で相談できる仲間や、本気で意見を言い合える仲間ができていったのは、一生の財産だと思います。本気で、自分の未来やキャリアについて話して言い合える仲間がいることはとても心強いことだし、そういう関係性が広がっていくといいのになと思っています。今はわたしたちの世代はほとんど社会人になってしまいましたが、社会人になってもお互いの仕事のことや今後のキャリアについて語り合える関係性が続いています。今の大学生などこれからの世代にもそういう関係性ができていくといいのになと思いながら、このご時世でなかなか対面で集まることができないのが心苦しいです。でもこの環境の中で、どうやったら本音で語り合える世代を超えた関係性ができていくのかを考えていくというのが、これから考えていくべき課題なのかもしれません。

Q.そういう人との関係性が幸せにつながるって石倉さんがわかっているから広げていきたいという思いなんですね。この地域とか、学年とか、出身を超えた仲間が増えて広がって行くことが石倉さんの今後の取り組みたいテーマであり、ルーツしまねでやりたいということなんですね。
ルーツしまねを通してやっていきたいところはそうですね。私自身が、時には真剣に話し合い、時にはバカやって遊べる同世代との横の関係や、「休学とか、インターンってありなんだ」と教えてもらったり、話を聞いてアドバイスしてもらえる先輩とのナナメの関係性に助けられたからこそ、この関係を途絶えさせたらだめだと思っています。途絶えさせず、ずっとつなげていく一端を担えたらいいなと思っています。
Q.自分の原体験からすべての想いとか仕事がつながっているというのが面白いですね。これから石倉さんの考える仲間を増やしていきたいと思っているなかで、今後ルーツしまねで取り組みたいことはありますか?
今大学3年〜4年生の世代の子で、ルーツしまねの運営に携わってくれている子たちも数名いて、そういう大学生たちにとって本当に有意義だったと思える機会を一緒に作れたらいいなと思っています。ただ使っている、使われているという関係性は嫌なので、その子達一人ひとりにとって本当に意味のある機会が作れたらいいなと思っています。そいういう今の大学生たちと、社会人1〜3年目の私達の世代、ともう少し上の世代の人たちなど縦の関係をつないでいくこと、あと住んでいる地域を超えて関東、関西、四国、島根などにいる子達を横でつなげて行くことが今の私が描く仲間の広がり方です。最初の接点作りが大事で、あとは自分たちで自然と繋がり続けると思うから、、初期接点を作るということは自分ができたらいいなと思っています。いろんなロールモデルにたくさん出会ってつまみ食いしながら、自分なりの生き方をみんながそれぞれに考えていけるようになってほしいです。
Q.最後に、大学生だった石倉さんが、社会人に「島根おもしろいよ!」と言われていたと思うのですが、逆に石倉さんが社会人になって、「島根おもしろいと思う理由」を聴きたいです。
島根のことずっと嫌いだった私が、わざわざ県外に出たのに島根を好きになったということが、島根のおもしろさを物語っていると思います(笑)でも一番のおもしろさは、島根が嫌いだった頃の私も含めた私の人生の変遷を、島根県内各地のみなさんが見守ってくれている、ということですかね。東京にいた頃って、そもそも社会人と出会う機会もなかったですから。〇〇大学の私でも、〇〇企業の私でもなく、一人の人と人として繋がって下さって、一人の人として興味を持っていただいて、どんな決断をしても見守り応援してくださる暖かさ、それいいね!一緒にやろう!といってもらえる空気感は、島根のいいところであり、おもしろさかなと思います。
最後まで、読んでくださりありがとうございました。
インタビュアー shimada
ライター
島田美久
ルーツしまね事務局の島田です。